構想から13年の時を経て、木地などの下地を一切使わず、芯から表面まで、漆だけで作った『芯漆 阿修羅観音像』が完成。
奈良県 興福寺(こうふくじ)にある阿修羅像とは違い、漆だけでアートをつくる「芯漆(しんしつ)」技法で制作したので、今後、1億年経っても、経年劣化することのない阿修羅像となります。
「阿修羅」は、古代インドのアス(魔族)とするもので、ペルシアでは大地に恵みを与える太陽神として信仰されています。
インドでは、熱さを招き、大地を干上がらせた「帝釈天( たいしゃくてん、ていしゃくてん )」と戦う戦闘神として仏教に取り入れられてから、釈迦を守護する神と説かれるようになります。
「阿修羅」の姿は、三面六臂(さんめんろっぴ)で一番上にあげた手には弓と矢、中段の手には日輪、月輪を携え、下段の合唱した手は仏への感謝を表す印を結んでいます。
奈良の興福寺の阿修羅像は、脱活乾漆技法(だっかんかんしつぎほう)で制作されています。
脱活乾漆技法とは、粘土で作った原型の上にノリ漆をつけた麻布を何重にも重ね、最後に中の泥を抜き取り全体を支えるための心木(しんぎ)を入れて完成させるもので、中が空洞になっています。
興福寺の阿修羅像はノリ漆や錆漆(さびうるし)で作られているため、劣化が激しく、度々、修復されているのです。漆は、有機物の中で最も安定した物質です。ノリや錆を入れず、布も使わない山崖松花堂の新技法「芯漆」で作ることで、琥珀のように半永久的な作品となります。しかし、「芯漆」のように、下地となる木地などを一切使わず、芯から表面まで、漆だけでものづくりをすることは、想像を絶するほど難しく、困難を極めます。
2006年、国宝阿修羅を手本に制作に取り掛かり、構想から13年の歳月をかけ、誰も作ったことのない漆だけで百数十回の工程を経て作られた仏像がこの芯漆 阿修羅観音像です。
この芯漆 阿修羅観音像は2019年に完成しました。今後、1億年経っても、世に残るアート作品です。