漆器は“芯”が木地。従来の漆器とは全く別物で、『芯漆』は、漆ならではの性質“偏光性”と“耐久性”を最大限に活かした“漆の塊”なのです。
漆を最大限に活かすために、従来の漆器とは違い、『芯漆』では木地、ノリ、布など、下地となるモノを一切利活用していません。
漆の耐久性に関しては、化石として発見された琥珀(こはく)や縄文時代に発見された“漆”道具が証明しています。
漆と同じ性質の琥珀が世界各地で発見されていることから、質の良い漆100%であれば、半永久的に長持ちすると言えるかと思います。
漆と琥珀は、自然が生み出した天然の高分子化合物で、塩分やアルコールに強く、防水、防腐性もあり、電気を絶縁するなどの特性を持ちます。
固まると液体に戻ることはありません。
漆は、科学的に最も安定している有機物の一つです。
木地や布などに漆を塗る従来の漆器製作の固定概念を捨て、漆器製作で最も重要となる“漆の本質”を深く理解することで、誕生した技術が『芯漆』です。
PHOTOGRAPH COURTESY MING BAI, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES(CAS)
つい先日、9900万年~1億年前の琥珀が見つかり、その中には蛇の赤ちゃんが閉じ込められていました。(それに関する報道記事はこちら)
漆はこれまで化石として見つかってきた琥珀と同じ性質をもつので、琥珀と同じ期間、もしくはそれ以上長持ちすると自信を持って言えます。
『芯漆』は漆の本質を活かし、「永遠不滅」を概念にした技法が『芯漆』です。
『芯漆』はもはや、従来の漆器のように、木地を補強するために塗る漆ではなく、“漆だけでモノを作る”技術なのです。
『芯漆』の作品は、器だけでなく、仏像、香合(こうごう)、抹茶椀など、日本の伝統文化を表現するものがあります。
『芯漆』でつくったこれまでの作品の製作期間は、8年から最長23年です。
たとえば、この厚さ約1センチの朱色の『芯漆』作品(上の写真 左から2つと3つ目)は、国産漆を約350回塗り、16年かけて製作しました。
『芯漆』作品は永久不滅で経年劣化しません。『芯漆』作品は、琥珀化した“生きている”美術品だと思ってください。
通常、漆器は、漆に珪藻土、植物の油、顔料などを混ぜ合わせて作られていますが、『芯漆』での作品づくりでは顔料のみを混ぜて、色を調整しているのみです。